こんにちは。さいたま静脈瘤クリニック医師の神作です。
前回、静脈瘤と深い静脈の血の塊(深部静脈血栓症)について書いたので、今回は浅い静脈の血の塊(表在静脈血栓症)について書こうと思います。
静脈瘤の中に血の塊(血栓)が出来ることがある
静脈は、体の深いところを走る静脈(深部静脈)と浅いところを走る静脈(表在静脈)に分類されます。
浅い静脈の血栓は、基本的に重い病気ではないため研究は少ないのですが、いくつかの原因(リスクファクター)が指摘されています (*1)。その中でも静脈瘤は主要な原因です (*2, 3)。
実際、血の塊が原因でクリニックを受診し、静脈瘤と診断されることもよくあります。
浅い静脈に血の塊ができると、通常炎症が起きるので、赤くはれて痛みが出ます。そして、血管に沿って固い血栓がふれることも多いです。
静脈瘤は余り痛くない病気ですが、足がぼこぼこしているなぁ、と思っていたところ、ある日突然ぼこぼこが赤くはれて痛みが出てきたら、静脈瘤に血の塊が出来たのかもしれません。
治療はどうするの?
浅い静脈の血の塊は、通常はその場にとどまり肺へ飛んでいくことは稀であるため、痛み止めと着圧ソックス(弾性ストッキング)で様子を見ることがほとんどです。
静脈瘤の治療が必要な場合は、炎症が治まってからおこないます。
検査は必要?
検査をしなくても、視診・触診のみでおおむね診断できる病気ですが、ベースにある静脈の様子を見るために、一般的に超音波(エコー)の検査を行います。
浅い静脈に血の塊が出来た方は、別の場所にも血の塊が出来やすい可能性があるため、深いところの静脈に血栓が出来ていないかも超音波で調べます。
まれですが、浅い静脈から深い静脈にかけて血の塊がつながっていることがあり、その場合には血を固まりづらくする薬を飲んで頂くこともあります。
浅い静脈だけでも、範囲が広い場合にはそういった薬を使った方がいいか、考えます。
範囲を確認するためにも、一度受診をお勧めします。受診を迷われた方は、お気軽にお電話くださいね。
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詳しく知りたい方のための補足
1) 私が研修をしていたアメリカのメイヨークリニック(医師なら知らない人がいないくらい有名な病院グループ)は、寝たきり・静脈瘤・ペースメーカーや点滴など血管の中の管・妊娠・出産・ピルなどのホルモン剤・血栓の家族歴・血栓症の病歴・脳梗塞・60歳以上・肥満・がん患者・喫煙を挙げています。
Thrombophlebitis – Symptoms and causes – Mayo Clinic
2) 欧州血管外科学会の雑誌では、表在静脈血栓症に関する37の論文を調査し、静脈瘤は主な原因だとしております。一方で血が固まりやすい状態(凝固性亢進状態)が表在静脈血栓症の発生には最も関与していたと報告しています。がんも表在静脈血栓症の発症に関わっていると言われていますが、その程度は不明です(Eur J Vasc Endvasc Surg 2005;29(1):10-17)。
3) 日本静脈学会の調査では、静脈瘤の患者さんの 6.6% に表在静脈血栓症がありました(静脈学 2016;27:249-257)。